「スクリーン・ダイレクション(画面の方向性)」は、映像を組み立てる際に重要な役割を果たします。少し詳しく、具体的に説明しましょう。
1. コンスタント・ダイレクション:
スクリーン・ダイレクションの中で最も基本的な要素の一つは、キャラクターやオブジェクトの進行方向がシーン内で一貫していることです。例えば、キャラクターが画面の左から右に歩き出す場合、その後のショットでも画面の左から右に動くべきです。
例: キャラクターAが物陰から登場し、画面の右側へ向かって歩くシーンがあります。 その後もキャラクターAの部屋を横断するアクションが続く場合、ドアは画面の右側にある必要があります。
もちろん逆向きに進行する画を繋ぐということもできますが、視点(カメラ)が移動したことを理解できるコンテクストが必要です。
2. ルール・オブ・サム:
視聴者は同じシーン内で同じ方向に移動する複数の要素を一つのグループとして認識する傾向があります。この規則に従い、複数のキャラクターが同じ方向に移動する場合は、それらのキャラクターが共通の目的を持っていることが理解されやすくなります。
例: グループのメンバーが森を進んでいるシーンを考えてみましょう。全員が画面の左から右に向かって進むと、視聴者はみんなが共に目的地に向かっていると理解します。
3. カット・アウェイによるスクリーン・ダイレクション維持:
次のカットで、前のカットで捉えた人ではなく、オブジェクトやその人の視界や想像を捉えた映像を挿入することをカット・アウェイと呼びますが。このカット・アウェイを使えば、この後のカットがどちらの方向性を持っていても、視聴者のスクリーンダイレクションは混乱しません。
例: たとえば、あるキャラクターが画面の左から右に歩いているシーンがあります。 その後、キャラクターが画面の右側に到達し、次のショットにキャラクターの視点や周囲の景色を映したカット・アウェイを挿入します。 このカット・アウェイによって、キャラクターの位置関係を混乱させずに、次のショットに移行することができます。
4. 色彩の方向性:
スクリーン・ダイレクションには、動きだけでなく、色彩の方向性も重要な要素として含まれます。
例: 物語の進行に伴ってシーンの雰囲気が暗くなる場合、色調を徐々に暗くしたり、ブルーやグレーのフィルターをかけたりすることで、視聴者にその変化を感じさせることができます。また、色彩の方向性は感情表現にも密接にこだわっています。例えば、青い色調は寂しさや冷たかった表現をすることに適している方、赤い色調は情熱や興奮を表現するのに適しています。色彩の方向性を考慮する際には、シーンの連続性や物語の進行との調和を重視する必要がありあます。特定の色調がシーンの雰囲気と一致していない場合、視聴者に違和感を感じる可能性があるからです。
5. 空間的な認識:
画面上の空間的な関係をわかりやすくするために、視聴者に対して定点観測を提供することが重要です。視聴者はカメラの位置や角度を判断することで、物語の場所や状況がより明確になります。視聴者は、物語の進行に合わせて登場人物やオブジェクトが配置されている場所を把握する必要があります。
例: キャラクターが部屋の中で行動するシーンを考えてみましょう。もしカメラの位置や角度が一貫していないと、部屋のレイアウトが理解しにくくなります。例えば、キャラクターが部屋の入り口から中に入る場面でカメラが入り口側から見ていたのに、その後のショットでは反対側から見ていると、視聴者は部屋の中でのキャラクターの位置関係を混乱させる可能性があります。スクリーン・ダイレクションは、視聴者の認識を混乱させないために編集者や監督が映像を見るために重要な要素でです。これにより視聴者は物語をより見やすくなり、映像の一体感と連続性が向上します。
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