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Tomizo Jinno

2倍速再生視聴を前提とした動画・映像コンテンツ制作

12月3日づけの日本経済新聞に興味深いコラムが掲載されていました。

 就活のリアル(曽和利光さん) ※有料記事


要約

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説明会のあり方を見直し始め、従来は年間100回以上のライブ説明会を開催する企業も多かったものの、現在では録画した説明会動画をウェブサイトやYouTubeで公開し、学生が好きな時間に2倍速で視聴できるようにする企業が増えている。実際、これらの動画は深夜帯に最も視聴されており、学生の生活スタイルに合わせた情報提供が実現している。

面接においても同様の変化が起きており、初期面接を動画提出に切り替える企業が増加していて、この方法により、企業は多数の応募者を効率的に評価でき、学生も自分のペースで準備できている。

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ここ数年、この倍速再生という言葉を耳にするたび、映像制作者として忸怩たる思いをしてきた私ですが、ここまで定着している若者の行動様式を無視することはできないと思うようになりました。


早口のため聞き取れなくて困っている女性


動画・映像視聴=情報収集!


倍速視聴という習慣がある人と、そうでない人では、何が違うのでしょうか。映像制作する者が、この倍速再生視聴に対応するとしたら、どのようなことに注意、配慮すべきでしょうか。

倍速視聴習慣がある人は一言で言えば、動画・映像コンテンツを視聴することは、エンタメであれ教育ビデオであれ、それらは情報源であり、それらを視聴するのは「情報収集」だと考えていることに焦点を当てなければなりません。

動画・映像コンテンツをすべからく「情報源」と考えている人に向けた、倍速視聴を前提とした動画・映像コンテンツづくりを考えてみました。



音声設計の基本原則


2倍速再生時の音声明瞭度を確保するため、ナレーターやコメント発言者の選定が極めて重要です。滑舌の良さと発音の明瞭性は必須条件となります。特に、「サ行」「タ行」などの子音や、長音、促音の発音には細心の注意を払う必要があります。また、重要な情報やキーワードを伝える際は、一定の間隔を設けてリズミカルに配置することで、2倍速再生時でも適切な情報の受容が可能となります。



視覚情報のデザインと構成


図表やテロップの表示には、新たな配慮が必要です。過度なモーションエフェクトは2倍速再生時に視認性を著しく低下させるため、静的な表示を基本とします。特に数値データや重要な図表を提示する際は、通常の1.5倍から2倍程度の表示時間を確保することで、視聴者の理解を促進できます。また、画面の視線誘導を意識し、情報の配置は左上から右下への自然な流れを意識した構成が効果的です。



字幕とテキスト情報の最適化


スピーカーの発言内容を字幕化する際は、全文表示ではなく文字量を2/3程度にした要約文を採用します。この際、1行あたりの文字数は15〜20文字程度に抑え、2倍速再生時でも十分な可読性を確保します。また、画面上の配置は視認性の高い位置(画面下部の中央付近)を選択し、背景とのコントラストも考慮します。

場合によっては二行表示で、表示時間を長めにとるという選択肢もあるかもしれません。



編集技術と構成の工夫


定期的に見出しや要点整理の画面を挿入することで、視聴者の理解を補助します。これらの整理画面は、通常の映像よりも表示時間を長めに設定し、2倍速再生時でも十分な認識が可能となるよう配慮します。また、映像の内容からトーク内容が推測できるよう、定番的な編集手法(インタビュー時の表情のアップや関連映像のインサートなど)を効果的に活用します。



映像構成の基本設計


カット割りの設計では、1カットあたりの尺を従来よりもやや長めに設定します。2倍速再生時でも映像の流れが自然に感じられるよう、最低でも3秒程度の尺を確保することが望ましいです。また、場面転換時には、視聴者が文脈を理解できるよう、確立したトランジション手法を用いることで、スムーズな展開を実現します。



技術的な配慮事項


音声面では、2倍速再生時のピッチ変化を考慮し、やや低めのトーンでの収録を推奨します。また、背景音楽(BGM)の選択では、テンポの遅い楽曲を採用することで、高速再生時でも違和感のない音響環境を創出できます。映像の圧縮設定においても、2倍速再生時のフレーム落ちを防ぐため、適切なビットレートの設定が重要です。



行き着く先は「映像なんて要らない」!?


2倍速視聴を前提とした映像制作によって、音声、映像、テキストの各要素を適切に設計し、それらを効果的に組み合わせることで、高速再生時でも十分な情報伝達が可能な質の高いコンテンツを制作可能かもしれません。


しかし、もっと慎重に考えるならば、倍速再生されると言うことは、そのコンテンツが動画というメディアで公開されることに適していないのかも知れません。もしかしたら、平面書類で十分な情報かも知れません。そうした情報を倍速とは言えわざわざ時間をかけて視聴するもナンセンスなことです。そうだとすると、課題は文字を読まない若者の行動様式にたどり着くことになります。

ナンセンスではあるものの、若者たちが動画から情報を得る行動に理由がないわけではありません。この問題は今回話題の範疇を越えるので差し控えるとして。


倍速再生対応コンテンツが普及すると、つぎは視聴者は4倍速再生をスタンダードとする日が来るかもしれません。その先の未来は・・・映像なんて要らないから、要約して箇条書きにして!と言われるかもしれませんね。


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