困った時の箇条書き
ビジネスプレゼンテーションの定番ソフト“パワーポイント”を使ったことがある人なら、心当たりがあると思います。困った時には箇条書きにしてしまうという経験を。
私自身も「課題」を洗い出したり、「手段」を考えていると、ともすると脳裏に脈略なく浮かんだアイデアを、ただ羅列してしまいます。
しかし、私はPR映像のシナリオライターでもありますから、羅列した項目の中に脈略がないものが混ざっていると、シナリオに収まりきらない事態が起こります。ですから、必ず整理して、項目相互の関係性を明示するようにしています。

箇条書きの罠:思考停止を招く安易なツール
ビジネスの現場では、情報を整理し、効率的に伝えるために、誰もが一度は箇条書きを使ったことがあるでしょう。「要点をまとめました」「メリットは以下の通りです」といった具合に、手軽に情報を羅列できる箇条書きは、一見便利なツールです。しかし、安易な箇条書きは、思考停止を招き、ビジネスの発展を阻害する危険性を孕んでいます。ビジネスにおける情報は、単なるデータの羅列ではなく、相互に関連し複雑な意味を持つものです。箇条書きは、その複雑さを単純化し、本質を見えにくくしてしまいます。
箇条書きの限界:情報の断片化と関係性の喪失
例えば、
◾️売上向上のための施策
新規顧客の獲得
既存顧客の満足度向上
商品ラインナップの拡充
広告宣伝の強化
これらの項目は、それぞれ独立した施策のように見えますが、実際には密接に関連しています。新規顧客の獲得は、広告宣伝の強化によって促進され、既存顧客の満足度向上は、商品ラインナップの拡充によって実現される可能性があります。しかし、箇条書きでは、これらの関係性が明確に示されません。そのため、各施策が場当たり的に実行され、全体としての効果が薄れてしまう可能性があります。
◾️プロジェクトの課題
予算超過
納期遅延
人員不足
関係部署との連携不足
これらの項目は、プロジェクトの課題を羅列したに過ぎず、それぞれの課題がどのように発生し、互いにどのように影響し合っているのかは示されていません。予算超過は、人員不足や関係部署との連携不足によって発生した可能性があります。また、納期遅延は、予算超過や人員不足によって悪化した可能性があります。しかし、箇条書きでは、これらの因果関係が明確に示されません。そのため、根本的な原因を特定できず、効果的な対策を講じることができない可能性があります。
箇条書きには文脈がほとんど無い
箇条書きリストが伝えることができる論理的な関係(文脈)は、わずか3つに過ぎません。
順番
重要性
メンバー
メンバーとは、リストに含まれる要素が、何らかの共通の属性を持つことを示すに過ぎません。これらの関係性は、情報の表面的な構造を捉えるには有効ですが、その深層に潜む複雑な関係性を捉えることはできません。
箇条書きリストは、一度に一つの関係性しか表現できないという制約があります。つまり、順番と重要性を同時に示すことはできないのです。これは、私たちの思考が、多層的で複雑な関係性に基づいて成り立っていることを考えると、大きな制約です。人間の思考は、多角的、輻輳的な視点から物事を捉え、複雑な関係性を理解する能力を持っています。
箇条書きリストの最大の問題点は、リストされた要素間の重要な関係性を無視してしまうことです。因果関係、前提、背景、分析過程―これらの情報は、箇条書きリストからは排除されます。私たちは、情報の表面的な構造を理解したつもりになりますが、その背後にある文脈を失ってしまいます。ビジネスにおける情報は、単なる記号の羅列ではなく、意味と文脈を持っているはずです。
箇条書きは問題の先送り:思考停止と楽観主義の危険性
箇条書きは、複雑な問題や困難な課題を、あたかも解決済であるかのように見せかけることができます。
事業の将来展望
市場の成長
技術革新
競合他社の動向
法規制の緩和
これらの項目は、事業の将来性を楽観的に示したに過ぎず、具体的な戦略や課題解決策は示されていません。市場の成長は、競合他社の動向や法規制の動向によって左右される可能性があります。また、技術革新は、研究開発投資や人材育成によって実現される可能性があります。しかし、箇条書きでは、これらの不確実性や課題が曖昧にされ、あたかも事業の将来が約束されているかのように錯覚してしまいます。このような安易な楽観主義は、問題を先送りし、将来的なリスクを増大させる可能性があります。
ストーリーで語る:思考を深め行動を促すコミュニケーション
箇条書きの罠から脱却し、ビジネスを成功に導くためには、情報をストーリーで語ることが重要です。ストーリーは、情報を文脈の中で語り、要素間の関係性や因果関係を明確にします。ストーリーは、人間の感情に訴えかけ、共感を呼び起こす力を持っています。それは、単なる情報の羅列ではなく、聞き手の心に響くメッセージを伝えることができます。
例えば、「売上向上のための施策」というテーマであれば、「当社は、近年、売上が伸び悩んでおり、新たな成長戦略が求められています。そこで、私たちは、顧客ニーズの変化を分析し、新たな商品ラインナップを開発しました。また、顧客満足度を高めるために、顧客サポート体制を強化しました。さらに、広告宣伝を強化し、新規顧客の獲得に力を入れました。これらの施策により、顧客層が広がり、売上が大幅に向上しました。」というストーリーを語ることができます。
このストーリーは、各施策がどのように関連し、どのような効果を生み出したのかを明確に示しています。そのため、読者は、施策の背景や目的を理解し、共感することができます。これは、単なる成功事例の報告ではなく、聞き手の心に響く物語となります。
図解の活用:視覚的な理解を促進する
ストーリーをより効果的に伝えるためには、図解を活用することが有効です。図解は、情報を視覚的に表現し、複雑な関係性を分かりやすく示します。地図やグラフのように、情報を整理し、全体像を把握しやすくします。
例えば、「プロジェクトの課題」というテーマであれば、課題間の関係性を矢印で示す因果関係図、各課題の発生要因をツリー状に示すロジックツリー、各課題の解決策をマトリックスで示す課題解決マトリックス、という図解を作成することができます。
これらの図解は、課題の全体像を把握し、優先順位や解決策を検討する上で役立ちます。図解は、言葉だけでは伝えきれない情報を、視覚的に分かりやすく伝えることができます。
箇条書きの適切な使用:状況に応じた使い分け
もちろん、箇条書きが常に悪いわけではありません。短く、簡潔に情報を伝えたい場合には、箇条書きは有効です。例えば、会議の議事録やタスクリストなど、情報を整理し、共有する場合には、箇条書きは便利です。しかし、重要な意思決定や戦略立案など、深く思考する必要がある場合には、箇条書きに頼らず、ストーリーや図解、そして映像を活用することが重要です。状況に応じて適切なツールを選択することが、効果的なコミュニケーションに繋がります。
弊社の映像は箇条書きからは生まれません
箇条書きの罠から脱却し、ビジネスを成功に導くためには、情報をストーリーで語り、図解を活用し、箇条書きの使いどころを見極めることが重要です。深く思考することで、新たなアイデアや解決策が生まれます。そして、そのアイデアや解決策をストーリーで語り、図解で示すことで、関係者の共感を得て、行動を促すことができます。
そして図解よりもさらに有効な手段が映像です。映像は、視覚と聴覚に訴えかけ、より強い印象を与えることができます。複雑な情報を分かりやすく伝え、感情に訴えかけることで、人々の心を動かし、行動を促すことができます。
映像※は箇条書きからは生まれません。
箇条書きに文脈を与えストリーを描き出すのが、私たちの仕事です。
あなたのビジネスにおけるコミュニケーション手段として、ぜひご検討ください。
※ 構成・シナリオがある映像。ショート動画やイメージ映像は除きます。
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