映像が完成して、クライアントに立ち合いいただきながらナレーション録音を始めたら、思っていたよりも原稿量が多くて、映像の尺に収まらない!ということが昔はよくありました。VHSテープで仮編集していた頃の話です。
この時代でも、仮編集時には自分の声でナレーションを読んで録音した音声を使って、映像+音声編集するということはしましたが、自分で読むとどうしても喋りが速く、本編集後、プロのナレーターがしっかりと間合いをとって読むと、カットに収まらないことが頻繁にありました。今は生成AI音声で、しっかり間合いをとりながら仮ナレーションをつくりますので、そうしたことは減りましたが、それでもたまには起こります。
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映像の尺が足りない!そんな時は「体言止め」
映像制作の現場で、誰もが遭遇するであろう難題。それが、この「尺が足りない!」という状況。そんな時に役立つ原稿法が「体言止め」。
体言止めとは、文末を名詞(体言)で終わらせる表現技法のこと。通常の文末は動詞や形容詞などで終わるが、体言止めでは名詞で終わらせることで、文章を短くすることができる。
例えば、「この商品は画期的な技術で開発されました」という文章を体言止めにすると、「この商品、画期的技術」となる。たったこれだけで、文章が短くなるだけでなく、力強い印象を与えることができる。
尺が足りない時、体言止めはまさに救世主となる。文章を短くすることで、限られた時間内に情報を詰め込むことができる。
リズムと変化がつけられる
しかも、体言止めは単に文章を短くするだけでなく、テンポを良くする効果もある。
映像に合わせてテンポの良いナレーションを心がけることは、視聴者の集中力を維持するためにも重要だ。体言止めを効果的に使用することで、映像とナレーションが一体となり、視聴者を映像の世界へと引き込むことができる。他の表現方法と組み合わせることで、メリハリのあるナレーションを作ることもできる。
例えば、重要なポイントは体言止めで強調し、その他の部分は通常の文末表現にするなど、工夫次第で豊かな表現が可能になる。
もちろん、体言止めばかりのナレーションは単調になりがちだ。困った時の体言止めは、一連の文章の中では一箇所に留めた方が良い。さらに、映像のカット割に合わせて語順を工夫することも必要だ。
さらに、体言止めは著述家にとっては稚拙な手法と考える人もいる。体言止めは言葉を省略して読者(聴取者)の想像に任せるわけなので、インチキと言えばインチキかも。
覚えておきたい「体言止め」
尺が足りない時は、焦らずに体言止めを思い出してほしい。そして、体言止めうまく使って、映像にぴったりのナレーションを作り上げてほしい。
体言止めは、映像制作における一つのテクニックに過ぎない。しかし、困った時には頼りになる存在であることは間違いない。クライアントの前で、ササっと原稿変更してみよう。
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