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インタビュー撮影時の目線と意図

インタビューという映像手法は、かつてより多用されるようになりました。


第1の理由は、制作者の力量や制作予算が比較的低い場合から、高い場合まで、それなりにコンテンツとして成立する映像づくりが可能なことから、この手法が選択されることが多くなったと考えられます。


第2の理由は、デジタル一眼カメラ撮影によるシネタッチ(背景ボケ)な映像がカッコイイため、被インタビュー者の品位を高く見せることができる。


第3の理由は、時代背景から「採用動画」の需要が増え、社風を伝えるためのインタビューを多用した採用動画をオーダーする企業担当者が、この手法を希望することが多くなった。


今回のテーマは、このインタビュー撮影における「目線」の問題です。最近はインタビュイーもカメラも見ていない、明後日(!?)目線の映像が多いように思いますが、目線の設定は視聴者に大きな影響を与えるものです。



インタビューにおける目線3種

インタビュー撮影時の目線と意図
インタビュー撮影時の目線と意図

撮影時、インタビューを受ける人(以下、被インタビュー者)の目線は非常に重要な要素です。目線は、視聴者との間に心理的な繋がりを作り出し、信頼性や親近感を醸成する上で大きな役割を果たします。


1.目線の基本的な種類

a) カメラ目線:被インタビュー者が直接カメラを見る

b) インタビュアー目線:インタビュアーを見る

c) オフカメラ目線:カメラやインタビュアー以外の場所を見る


a)カメラ目線:効果と使用場面

カメラ目線は、視聴者と直接的なコネクションを作り出す強力な手法です。

効果:

  • 視聴者との直接的な対話感を生む

  • 信頼性や誠実さを強調する

  • 重要なメッセージを強調する

使用場面:

  • ニュースキャスターの報道

  • 政治家のスピーチ

  • 教育コンテンツ

  • 製品プレゼンテーション

注意点:

  • 長時間のカメラ目線は不自然に感じられる可能性がある

  • 練習が必要で、不慣れな人には難しい場合がある


b)インタビュアー目線の効果と使用場面

インタビュアー目線は、より自然な会話の雰囲気を作り出します。

効果:

  • 自然な対話感を演出

  • リラックスした雰囲気を作る

  • 被インタビュー者の素の表情を引き出しやすい

使用場面:

  • 一般的なインタビュー番組

  • ドキュメンタリー

  • トークショー

注意点:

  • インタビュアーの位置がカメラに近いほど、視聴者との繋がりが強くなる

  • インタビュアーの反応が重要になるため、適切なリアクションが求められる


c)オフカメラ目線の効果と使用場面

オフカメラ目線は、思考や回想のプロセスを視覚的に表現します。

効果:

  • 内省的な雰囲気を作り出す

  • 被インタビュー者の思考プロセスを表現

  • ドラマチックな効果を生む

使用場面:

  • 過去の出来事を回想する場面

  • 複雑な問題について考えを巡らせる場面

  • 芸術的なドキュメンタリー

注意点:

  • 長すぎるオフカメラ目線は、視聴者との繋がりを弱める可能性がある

  • 使用頻度が高すぎると、不自然に感じられる



2. 目線の変化とその効果

インタビュー中に目線を変化させることで、様々な効果を生み出すことができます。

  • カメラ目線からインタビュアー目線への変化: 重要なポイントを強調した後、より詳細な説明に移る際に効果的

  • インタビュアー目線からオフカメラ目線への変化: 質問に対して深く考えを巡らせていることを表現する

  • オフカメラ目線からカメラ目線への変化: 思考の結果として重要な結論を述べる際に効果的


3. 文化的背景と目線

目線の意味や適切さは文化によって異なることがあります。

  • 西洋文化:直接的な目線を誠実さの表れとして捉える傾向がある

  • 東アジア文化:長時間の直接的な目線を失礼と捉える場合がある

  • 中東文化:同性間では直接的な目線が一般的だが、異性間では避けられることがある

これらの文化的違いを考慮し、インタビューの対象や視聴者に応じて適切な目線の使い方を選択することに注意が必要です。


4. 技術的な考慮事項

カメラの位置や数、照明の設定なども、被インタビュー者の目線に大きな影響を与えます。

  • カメラの高さ:目線の高さに合わせることで、より自然な印象を与える

  • マルチカメラ撮影:複数の目線を使い分けることが可能になる

  • 照明:目の周りの陰影により、目線の印象が大きく変わる


5. 非言語コミュニケーションとしての目線

目線は言葉以上に多くの情報を伝えることがあります。

  • 信頼性:一定の目線を保つことで、誠実さや自信を表現できる

  • 感情:喜び、悲しみ、怒りなどの感情が目線に現れる

  • 思考プロセス:考えを巡らせる際の目の動きが思考を反映する


6. 目線のトレーニング

プロフェッショナルな被インタビュー者は、効果的な目線の使い方をトレーニングします。

  • カメラに慣れる練習

  • 自然な目線の移動を習得する

  • 感情や思考を目線で表現する技術を磨く


7. 編集による目線の操作

後編集により、目線の効果を強調したり、不自然な目線を修正したりすることができます。

  • カットの使い分け:異なる目線のショットを組み合わせて効果的な流れを作る

  • リアクションショットの挿入:インタビュアーの反応を示すことで、目線の意味を強調する

  • スローモーションやズーム:重要な目線の瞬間を強調する


8. 将来の技術と目線

AI技術やVR/AR技術の発展により、目線の扱いに新たな可能性が生まれています。

  • アイトラッキング技術:視聴者の興味関心を分析し、より効果的な目線の使い方を導き出す

  • バーチャルインタビュー:VR空間でのインタビューにおける新しい目線の概念

  • AI編集:最適な目線のカットを自動的に選択する技術



結論:

ビデオカメラによるインタビュー撮影において、被インタビュー者の目線は単なる視線の方向以上の意味を持ちます。それは、視聴者との心理的な繋がり、信頼性の構築、感情や思考の表現、文化的な配慮など、多層的な要素を含んでいます。

効果的な目線の使用は、インタビューの内容をより豊かに、より印象的に伝えることを可能にします。同時に、被インタビュー者の個性や真意を引き出し、視聴者により深い理解と共感をもたらすことができます。

しかし、目線の扱いには細心の注意も必要です。不適切な目線は、視聴者に不快感や不信感を与える可能性があります。また、過度に演出された目線は、インタビューの真実性や自然さを損なう恐れもあります。

したがって、インタビューの目的、内容、対象視聴者、文化的背景、技術的制約などを総合的に考慮し、最適な目線の戦略を立てることが重要です。それは、カメラワーク、照明、編集など、制作の様々な側面と密接に関連しながら、インタビュー全体の質を決定する重要な要素となります。

今後、技術の進歩とともに、目線の扱いにも新たな可能性が開かれていくでしょう。しかし、どのような技術が発展しても、人間同士の真摯なコミュニケーションの象徴としての目線の重要性は変わらないでしょう。インタビュー制作に携わる者は、この普遍的な人間のコミュニケーション要素を深く理解し、効果的に活用する技術を磨き続けることが求められます。

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