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Tomizo Jinno

テレビ画面周囲に常時表示される緊急情報

制作も編成も頑張ってくれているNHK

NHKの番組づくりは、このコロナ禍という未曽有の非常事態において、社会のインフラメディアとして揺るぎない存在感を示している。正確な情報を届けようとする使命感、そして視聴者の不安に寄り添おうとする姿勢は、最後の良心の砦として高く評価できる。特に、緊急事態宣言下での特別編成や、在宅視聴者向けの教育コンテンツの充実など、状況に応じた柔軟な対応には目を見張るものがある。そんな彼らの懸命な努力を、今も深く信頼しているのだが、ただひとつ、どうしても改善してほしいことがある。

実際の放送画面ではありません
実際の放送画面ではありません

画面を占拠する青い帯

現在のNHK放送では、画面の左端約17%を「東海3県 外出自粛を QRコード」という情報が占め、画面上部の14%には刻々と変化する速報ニュースが常時表示されている。この配置により、本来の番組映像が表示される有効画面は約80%にまで圧縮されてしまっている。さらに気になるのは、それらの情報帯が鮮やかな青色で縁取られ、番組内容や映像の雰囲気とは全く無関係に、強烈な存在感を放っていることだ。

よく観察してみると、画面下部にも3%ほどの青い帯が這っているではないか。なるほど、これは緻密な計算の上での配置なのだろう。上部14%、下部3%で合計17%、そして左端も17%。この均等な削減により、残された有効エリアを16:9のアスペクト比に収め、オリジナルの番組コンテンツをそのまま縮小表示しているわけだ。技術的には合理的な解決策なのかもしれないが、果たしてそれで良いのだろうか。


制作者の立場にたって思う

このような画面構成について、番組を制作するスタッフたちはどのような思いで見ているのだろうか。日々のニュース番組や、ライブ感のあるバラエティ番組であれば、「非常時だから仕方がない」と割り切れるかもしれない。しかし、例えば高精細な自然記録や歴史ドキュメンタリーなど、1年以上の歳月をかけて丹念に映像を収集し、完璧な編集を重ねて、ようやく放送日を迎えた作品の場合はどうだろう。制作者たちは相当な無念さを抱えているのではないだろうか。美しい夕陽や、一瞬の野生動物の表情、歴史的建造物の織りなす陰影など、魂を込めて撮影した映像の端が切り取られていくのを見るのは、さぞ辛いことだろう。


1カットだってテキトーな画面はない

テレビ番組の映像は、一見何気ない場面にも制作者の意図が込められている。「1カットくらい見逃しても大丈夫」と言ってしまうのは大げさかもしれないが、それでも各シーンには明確な意図と役割がある。画角やフレーミング、被写体の配置、そして色調や明暗のバランスまで、すべてが計算され尽くされている。視聴者が一時的に目を離しても大丈夫なような、いい加減な映像作りをしている制作者など、この業界には存在しないはずだ。同じ映像制作に携わる者として、彼らの無念さに深く共感せずにはいられない。


ハードとソフトでなんとかならない?

この状況を改善する技術的な解決策はないものだろうか。例えば、テレビ受像機自体に新機能を実装し、視聴者が必要に応じて情報帯の表示・非表示を切り替えられるようにするとか。あるいは、放送信号に情報の優先度を付加し、視聴者側で表示方法をカスタマイズできるようにするとか。

ただし、ここで新たな課題も浮上する。もし視聴者に選択権を与えた場合、緊急性の高い情報が常時オフにされてしまう可能性もある。それは本末転倒かもしれない。であれば、別の方向性での解決策はどうだろう。例えば、テレビ本体に小型のサブモニター(LED画面)を増設し、そちらに情報を表示するとか。技術革新により、そうした新しいアプローチも可能になってきているのではないだろうか。



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