アメリカの第82回ゴールデングローブ賞で、ドラマ「SHOGUN 将軍」が作品賞に選ばれたそうです。このドラマがセリフの7割が日本語でありながら大ヒットし、多くの権威ある賞に選ばれたのは、「動画配信サービスの普及で米国でも字幕文化の土壌ができたからだ」と報じられています。ということは、これ以前に米国では外国映画や外国ドラマを字幕で視聴することが無かったかのように受け取れますが、これは単に米国では外国映画や外国ドラマを、字幕にしてまで放映、放送してこなかったというのが真相のようです。
日本における字幕文化
ところで、日本の「字幕」は、映画やテレビ番組などで、音声言語や映像内容について文字を使った翻訳・解説法です。その起源は、お芝居や話芸の際に使われていた文字を書いた幕や紙にまで遡ります。映画の導入と共に、映像作品のカットとカットの合間に文字画面を挟み込む方法が取り入れられ、トーキー映画の登場により、映像上に字幕を重ねて表示する方法が確立されました。テレビ放送の普及と共に、テレビ番組でも字幕が使用されるようになり、テロップとかスーパーと呼ばれるようになりました。
字幕の多用途化と過剰
字幕の役割は、外国語作品の翻訳、方言話者や伝統芸能の理解を助ける補完、バラエティー番組での強調、そして聴覚障害者への配慮など、多岐にわたります。
私の記憶が確かなら、現在のようにテレビ画面が字幕だらけになったきっかけは、二度あったと思います。ひとつは1990年前後にテレビ放送番組には聴覚障害者のために字幕の挿入が推奨されたことがありました。画面に常時表示するのではなく、リモコンでON/OFFできる機能はすでに開発されていましたが、普及がしておらず画面へのスーパーインポーズが急激に増えました。もうひとつのきっかけはBSでハイビジョン放送が始まり、続いて地上波の解像度が上がった(1,440×1,080)ことです。これにより、小さな文字でも表現可能になり、バラエティ番組や情報番組では四隅を全部スーパーで使うようになりました。「字幕」とは言えない図形まで常時表示される時代の始まりでした。
さらに現在では、映像コンテンツにおける言語音声を、そのまま字幕にすることが増えていて、音声を聞かずに視聴するスタイルが普及しています。この傾向は、視聴者の言語を目で捉える習慣を定着させ、結果として、言語を耳で聞き取る能力の低下につながっているという指摘があります。
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