top of page
Tomizo Jinno

今も残る動画や映像の性差表現技法

多様性の時代の性差表現


近年、メディアコンテンツにおいては、ジェンダーバイアスを避け、多様性を重視した表現が主流となっています。企業のブランディングやテレビCM、ウェブ動画など、様々な媒体で性別に関する固定観念を払拭する取り組みが進んでいます。しかし、映像制作の現場では、依然として性差を意識した演出手法が使われています。

これは差別的な意図によるものではなく、PRする商品やサービスの特性から、ターゲットに向けてパーソナライズすること、視聴者により効果的にメッセージを伝えるための技術的選択として、避けられない現実があるからです。長年の経験則から映像制作の現場、特に撮影現場で継続されている「女性は女性らしく」「男性は男性らしく」撮影する技法を紹介します。



光の演出による印象操作


女性を撮影する際の光の使い方


メインライトの特徴

  • 柔らかな拡散光を使用

  • 光源サイズを大きめに設定

  • 色温度は比較的高め(5600K前後)


光の当て方のテクニック

  • 顔全体を均一に照らす

  • 陰影を最小限に抑える

  • バックライトで髪の輪郭を強調


女性モデル


男性を撮影する際の光の使い方


メインライトの特徴

  • やや強めの指向性のある光

  • 光源サイズを比較的小さく

  • 色温度は低め(3200K前後)


光の当て方のテクニック

  • 意図的に陰影をつける

  • サイドライトで顔の立体感を強調

  • あごのラインを際立たせる照明


男性モデル



カメラワークと構図の使い分け


女性の撮影におけるカメラポジション


カメラの位置を被写体よりもやや高めに設定し、わずかに見下ろす角度で撮影することで、目の大きさが強調され、顔全体がすっきりと見える効果が得られます。


基本的なカメラ位置

  • 被写体の目線より10-15cm程度上方

  • カメラを下に5-10度傾ける

  • 顔の正面よりやや斜め(15-30度)


動きのある撮影での配慮

  • カメラの動きは滑らかに

  • 急激な角度変更を避ける

  • 被写体の動きに合わせてゆっくりとパン



男性の撮影におけるカメラポジション


反対に、男性の撮影ではカメラをやや低めに構えることで、顔の輪郭や顎のラインが強調され、凛々しい印象を与えることができます。


基本的なカメラ位置

  • 被写体の目線より5-10cm程度下方

  • カメラを上に10-15度傾ける

  • 顔の正面よりやや斜め(30-45度)


動きのある撮影での配慮

  • カメラの動きはしっかりと

  • 意図的にやや遅めの動き

  • 水平維持を意識した安定感




動きの演出における性差


女性の動きの演出ポイント


女性の動きを撮影する際は、柔らかさと優美さを強調する演出が一般的です。


基本的な動きの方向性

  • 曲線的な動きを意識

  • なめらかな速度変化

  • 柔らかな仕草を強調


具体的な演出例

  1. ヘアアクション

    • 風になびく髪の動き

    • 自然な髪の揺れ

    • ターンでの髪の広がり

  2. ハンドアクション

    • 優しい手の仕草

    • 小物を使った自然な動き

    • 表情に合わせたジェスチャー



男性の動きの演出ポイント


男性の動きは、力強さと安定感を意識した演出が主流です。


基本的な動きの方向性

  • 直線的な動きを基本

  • 一定のテンポ感

  • キリッとした仕草を強調


具体的な演出例

  1. 全身の動き

    • 安定した歩行

    • はっきりとした方向転換

    • 力強い立ち位置

  2. 上半身の演出

    • 視線の確かさ

    • 肩の力の抜け具合

    • 手の位置と動き




表情の引き出し方


女性の表情演出


コミュニケーションのポイント

  • リラックスした雰囲気作り

  • 明るい話題での会話

  • 自然な笑顔の誘導


狙いたい表情の例

  • 優しい微笑み

  • 爽やかな笑顔

  • 柔らかな真剣さ



男性の表情演出


コミュニケーションのポイント

  • 落ち着いた雰囲気作り

  • 専門的な話題

  • 自然な表情の維持


狙いたい表情の例

  • 知的な微笑み

  • 凛とした真剣さ

  • 余裕のある表情




撮影技法の使い分けと今後


これらの撮影技法を改めて読み直すと、これらはとりもなおさず人々の潜在意識に刷り込まれているジェンダーの概念です。

近年では、従来の性差にとらわれない表現も増えており、撮影技法もより柔軟な適用が求められています。これまで蓄積されてきた技術や知見についても、Up dateが必要になることは必至に違いありません。

映像制作者は、人々の目に入るものを創造していることを真摯に捉え、時代に即した表現方法を見出していく責任があります。性差を意識した撮影技法は、今後少しずつ変化していくことになるでしょう。

Comments


bottom of page