「年度」に縛られる事業
日本の社会システムには、4月1日から翌年の3月末日までを一つの区切りとして計画され、実行される「年度」という概念が根付いています。この制度は明治時代から続く伝統的なもので、企業活動はもちろんのこと、行政、教育、そして社会のあらゆる分野における事業がこの年度に基づいています。
冬枯れのロケーションばかり
多くの企業や団体の事業予算は、この年度制度に強く縛られており、新年度が始まってからの具体計画立案、承認プロセスを経て、実質的な事業実施は年度後半になることが一般的です。その結果、私たち映像制作会社に寄せられる案件の多くは、秋以降に本格的な始動となります。このタイミングで企画が動き出すと、実際の撮影時期は必然的に厳寒期に集中することになり、せっかくの作品に収められる風景のほとんどが冬枯れの殺風景なものとなってしまうという課題を抱えています。
私たちの切なる願いは、年度開始直後から案件を開始できる体制を整えることです。そうすれば、新芽が芽吹く春の生命力あふれる景色や、木々が深緑に染まる初夏の風景、また、真夏の眩しい陽光に照らされた躍動感のある情景など、日本の四季の豊かな表情を映像に収めることができるはずです。
あるいは、もっと柔軟な予算執行を可能にする制度改革を実現していただければ、この状況は大きく改善されるかもしれません。
年度制度改革
より大きな視点で見れば、日本社会全体として、この年度という時間区分の概念自体を見直すと良いかも知れません。例えば、単年度予算の硬直性を緩和し、複数年度に跨がる柔軟なプロジェクト運営を可能にする制度設計を導入することも、一つの解決策として考えられます。また、予算の繰越しをより容易にする仕組みづくりや、季節を考慮した事業計画の策定を推奨する指針の策定なども有効かもしれません。
せめて1月始まりで
もしこのような柔軟な制度改革が実現すれば、映像制作の現場は劇的に変化するでしょう。せめてドイツ、フランス、イタリアのように(諸外国の年度制度)1月始まりの予算年度制度になれば、桜咲く春、緑煌めく夏、紅葉燃える秋、そして雪化粧の冬と、四季折々の美しい自然の営みを背景にした多彩な映像表現が可能となり、より豊かなクリエイティビティを発揮した作品制作が実現できるはずです。それは同時に、各地域の観光資源の効果的な発信にもつながり、地域経済の活性化にも寄与することが期待できます。
壮大な夢
私たち映像制作に携わる者は、日本の四季の素晴らしさを存分に活かした、より創造性に富んだ映像作品を世に送り出したいという思いを抱いています。それは単なる願望ではなく、日本の文化的価値を高め、社会に新たな豊かさをもたらす可能性を秘めた、壮大な課題なのです。
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