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Tomizo Jinno

映像・動画制作におけるスクリプトとシナリオ

映像制作において、「スクリプト」という言葉は多様な意味を持ちます。その説明をする前に、基本的な理解をしましょう。本来、英語では「スクリプト」は日本における台本(シナリオ)という意味で使用されています。英語文化が浸透してきて、日本でも同様の理解をする人も多くいますが、日本おいてスクリプトは少し違った使い方がされてきました。


アメリカの場合


Script(スクリプト)


  • 脚本そのものを指す一般的な用語

  • Screenplay(映画脚本)

  • Teleplay(テレビ脚本)

  • Stage play(演劇脚本)

などを包括する言葉として使用



日本の場合


Scenario(シナリオ)


  • シナリオ

  • 台本

  • 脚本


Script(スクリプト)


  • 放送台本

  • あらすじ

  • 構成表/構成案

  • 撮影台本に書き込まれた撮影記録



日本の映像業界におけるスクリプトの意味


日本においてスクリプトは、一般にはシナリオ/台本/脚本よりも大まかな進行表という意味で使われてきたように思います。


シナリオ


フルバージョン

一般的に、映画やドラマの完成形に近い、セリフ、動作、場面設定などが詳細に記述されたものを指します。


詳細な情報

登場人物の心情や背景、セットのデザイン、衣装など、作品全体の情報を網羅的に記述していることが多いです。


制作の根幹

作品制作の出発点であり、すべてのスタッフが共通の認識を持つための基盤となります。



スクリプト


構成骨子

台本よりも簡潔な形で、ストーリーの流れや主要なシーン、セリフなどをまとめたものを指すことがあります。


プレゼンテーション用

プロジェクトの企画段階で、クライアントや関係者にアイデアを説明するために作成されることが多いです。


簡易版

詳細な設定や描写は省き、ストーリーの骨格を把握するためのものです。




もうひとつのスクリプト


さらに映画制作業界では、「スクリプター」が撮影台本に合わせて書いた(書き込んだ)記録のことをスクリプトと呼びます。



スクリプター(Script Supervisor / Continuity Supervisor)の仕事


一般にはあまり知られていないスクリプター(英語ではScript Supervisor / Continuity Supervisor)の仕事を紹介しましょう

日本の映像制作現場において、スクリプターは撮影現場の縁の下の力持ちとも呼ばれ、作品全体のクオリティ向上に大きく貢献しています。日本では歴史的に見て女性が担当することが多く、かつては男性監督の女房役として、スタッフたちの母親役として現場を陰で仕切るような存在でした。



プリティーウーマンでの「コンティニュイティ・エラー」


この仕事の重要性を知ることができる有名なエピソードがあります。それは1990年に公開された映画「プリティー・ウーマン」(主演:リチャード・ギア / ジュリア・ロバーツ)でのこと。

ジュリア・ロバーツ扮するヴィヴィアンがリチャード・ギア扮するエドワードのワイシャツを脱がせようと、ネクタイを取り、シャツのボタンを外したのに、次のカットでエドワードがアップになるとネクタイをしている。再度カメラが引くとまたシャツの前がはだけているというもの。こういうミスは「コンティニュイティ・エラー」と呼ばれ、スクリプターがしっかり仕事をしていれば避けられた事件(?)です。


スクリプトとシナリオ



スクリプターの主な仕事


現場によって違いますので、ケースバイケースと考えてください

1. 台本読込

  • 時間・場所の把握:台本中で経過する時間や、撮影場所を整理、把握します。

  • 台本の点検:矛盾したストーリーや撮影上の現実的な問題点を洗い出し、関係者に助言します。

  • タイムキーパー:各シーンに割り当てることができる時間を計算します。


2. 撮影記録

  • カットシートの作成: どのシーンをいつ、どこで、どのように撮影したかなど、撮影に関するあらゆる情報を記録するシートを作成します。

  • テイク管理: 同じシーンを何度も撮影する場合、どのテイクがOKテイクなのかを明確に記録します。

  • カメラ設定の記録: レンズの種類、絞り、シャッタースピードなど、カメラの設定を記録します。

  • 俳優の衣装・メイクの記録: 俳優の服装やメイクの詳細を記録します。

  • 小道具の管理: 使用された小道具の種類と状態を記録します。


3. 台本管理

  • 撮影順序の管理: 撮影順序が変更になった場合でも、台本と実際の撮影内容を照らし合わせ、整合性を保ちます。

  • アドリブの記録: 俳優のアドリブを記録し、編集の際に役立てます。


4. カット間の整合性チェック

  • 衣装・小道具: 衣装のボタンが外れている、小道具の位置が異なるなど、細かな部分までチェックします。

  • 俳優の容姿: 髪型、メイク、アクセサリーなどがカット間で変化していないか確認します。

  • 背景: 背景の小物やセットがカット間で変わっていないか確認します。

  • 時間経過: 物語上の時間が経過している場合、時計やカレンダーなどの小道具でそれを表現し、カット間で矛盾がないか確認します。


5. 編集への橋渡し

  • 撮影記録の整理: 撮影記録を整理し、編集者がスムーズに作業を進められるようにします。

  • 編集指示: 編集者に必要な情報を提供し、編集の方向性を指示します。



スクリプターの重要性


  • 作品全体のクオリティ向上: カット間の整合性を保つことで、作品に統一感と説得力を与えます。

  • 編集作業の効率化: 詳細な記録があることで、編集者はスムーズに作業を進めることができます。

  • 再撮影の防止: 撮影中に問題点に気づき、その場で修正することで、時間とコストを節約できます。



スクリプターに必要なスキル


  • 集中力: 長時間にわたって細心の注意を払い、記録を行う必要があります。

  • 記憶力: 多数の情報を正確に記憶し、記録する必要があります。

  • コミュニケーション能力: 監督やスタッフとの連携がスムーズに行えるように、コミュニケーション能力が求められます。

  • 臨機応変な対応力: 撮影現場は常に変化するため、臨機応変に対応できる能力が求められます。



現代ではデジタルカメラ、ビデオカメラやタブレット端末などを利用して、効率的、合理的に仕事を進める現場も増えて、その役割も徐々に変化しているようです。

「スクリプト」と検索すると、ほとんどの記事がコンピュータ用語としてのスクリプトの記事が挙がってきますが、映像制作業界においてもスクリプトは重要な役割を担っています、特にスクリプターの仕事は専門性と判断力という高度なスキルが求められる仕事です。


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