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Tomizo Jinno

映像制作費と作品の品位は正比例しない

映像・動画の品位とは

まず「品位」とは、何か。

僕が映像の品位を測る目安は、究極的には僕の主観ですが、たぶん一般の方も同じような目安で無意識に見分けるに違いないと思っています。

 

①テーマが明確で、無駄・雑音・染みがないこと

観る者がテーマを感じ取ることができる構成がされていて、大多数の人がそのテーマから受けるメッセージに共感する、あるいは理解すること。

雑音・染みとは、音声ノイズとか画面の汚れというのはもちろん含まれるけれど、上記のテーマ表出の足を引っ張る、その画像にそぐわない要素のことです。

シナリオの完成度もこれに含みます。

 

②映像そのものの質

映像の質には、被写体の美しさ、画像の鮮明度、画質・色管理・一貫性、デザインの洗練度、カメラ操作のスムーズさなど様々な要素が含まれます。

 

③音声の質

ナレーターの技量、個性、音楽・効果音の選択を含め、全体の音質・バランスの適切さのことです。

 

④オリジナリティ

これは映像の品位を超えて、惹きつけるチカラ。

BtoB映像では必ずしもこれがなくても、人々は映像の品位は感じ取りますが、このオリジナリティによってさらに魅力ある映像になると、いわゆるブレイクが起こります。

僕は最高品位にはこれが必要だと思っています。

 

⑤被写体のチカラ

予算があれば是非欲しい要件です。でも、予算が少なければ必要ありません。

この被写体のチカラというのは、画面に映っているモノやヒトや場所、景色が持っている、人の目や気持ちを惹きつけるチカラのことです。ある面ではオリジナリティと重なる、唯一無二な被写体のチカラ。このチカラも最高品位という称号を得るには、一般的には必要な条件です。

 

チカラを持った被写体を映した映像は、映像のテクニックを超えて人を惹きつけます。

例えば誰もが美しいと認め、様々なメディアでその美がコンセンサスとして定着しているモデルやタレントがそれです。あるいは日本人がコンプレックスを抱く、金髪で長身の白人を画面に収めれば、多くの日本人はその映像の品位が高い、と評価します。

 

こうしたことは風景にも言えます。

青い空とヨットハーバー、なんていう映像も非日常を印象付け、そこに映る人たちがおしゃれであれば、その映像はそれだけで品位高く思われます

もちろん、最低限の撮影技術は必要ですし、こうした被写体のチカラを損なうオブジェクトが画面の中に映っていたらいけません。それらしい空間にして撮影する必要はあります。

 

モノであれば、ポルシェやフェラーリ、アストンマーチンなどの車もそうです。

もちろんこれらの車は、形として美しいですが、その圧倒的なブランド性が、映像の品位を押し上げてくれます。

ほんと、こうしたことに人は、馬鹿馬鹿しいほど影響されるのです。

 

品位制作には技量とセンス

さて、これらの要素が満たすためには、制作者の技量やセンス、ノウハウが必要ですから、プロ領域のスタッフを大勢動員すれば、そのギャラが膨らみ、同時に彼らが使う道具の使用料も高額ですので、勢い多額の予算が必要です。

しかし僕は、映像の品位と制作予算は正比例するものとは思っていませんし、経験的にもそうではありませんでした。映像の品位を高める、維持するために必要なリソースは、つくろうとする映像(画像)の対象によって大きく違います。

地味な会社や商品のPRに④や⑤は必要ありません。むしろ胡散臭くなります。

 

全国区CMならリソースはふんだんに必要

例えば「人が登場して、料理を美味しそうに食べる」というカットを、ナショナルクライアントや全国区レベルのCM品位(①〜⑤を満たす)で実写で撮影しようとすると、ロケでもスタジオセットでも、いずれにせよ舞台設定を造り込み、美しい(?)モデルを起用して、スタイリストが綺麗な衣装を調達して、メイクアップアーチストがメイクして、テーブルスタイリスト、フードスタイリストも呼んで・・・。照明バッチリ、撮影特機バッチリ。と、数百万円から数千万円のものすごい費用が必要です。

 

同じテーマをイラストで表現するなら

ところが、これをイラストで表現するならば、たとえ全国区レベルのCM品位を狙おうとも、数万円~数十万円から可能です。

実写だから品位が高い、イラストだから低い、ではありません。上記の①②③が守られていれば、視聴者が感じ取る品位は高予算の作品の品位に劣らないということは、いくらでもあります。

 

予算=品位ではない

たとえ低予算でも品位の高い映像、例えばブランディングのための映像は作れます。

しかし現実に多い問題は、その映像のつくりかたを限定してしまう(④⑤を狙う)ことで、そのことに予算が使われてしまい、結果品位が確保できなくなることです。

 

上記の例でいえば、予算が無いからスタッフの自宅の台所で、知り合いの可愛い女性に、自前の衣装とメイクで出演してもらう・・・みたいなことになります。

中途半端なりにお金は掛かるけれど、出来上がった映像はどう見てもローカル色が出てしまいます。

 

テーマと予算

低予算でも高品位な映像をつくりたいならば、テーマと予算だけ示していただくのがいいと思います。

映像・動画の制作費と作品の品位は正比例しない

 

 

 


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