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鉄道ビデオのプロデュースを懐かしむ

日本国有鉄道(国鉄)が民営化して全国を6区域に分けた会社に分割されたのが1987年。すでに37年経過したわけですね。私が住む中部地区はご存知「JR東海」となりました。民営化直後のこの頃、鉄道事業以外の事業開発が盛んに行われていて、そのひとつとしてJR東海内に「関連事業本部」という部署が設置されていました。


その名の通り関連事業として、駅舎内の飲食店の出店・経営や主要駅の商業スペースの開発などがメインだったと記憶しています。ところがその関連事業本部のある社員の方「Tさん」がユニークな方で、いわゆるセルビデオを企画制作して販売するという事業を立ち上げていました。当時はイケイケどんどんのバブル景気。JR東海の潤沢な資金を使った、今なら目が飛び出るような制作予算でした。販売はフジサンケイグループのポニー・キャニオン。音楽にも予算を注ぎ込んで、私が関わる前から「環境ビデオ」と題して日本の大自然の春夏秋冬を、惜しみない贅沢なロケを敢行して映像化していました。ただし販売数はパッとしなかったと思います。そして次に考え出したのが「鉄道ビデオ」。駅のキヨスクでも販売しようというものでした。


当時私はあるプロダクションでプロダクションマネージャーからプロデューサーに昇格した頃で、JR東海のハウスエージェンシー(親会社資本の広告代理店)アド東海(現在のJR東海エージェンシー)の営業担当でした。ここの営業さんに連れられてTさんのもとを訪れ、その鉄道ビデオの構想を聞かされました。


高山紀行 ワイドビューひだ キハ85系特急型気動車

第1弾のテーマは、当時就航したばかりの「ワイドビューひだ・キハ85」(リンク先は著作者非公認です)を紹介するというもの。

当時はまだキハ85の生産が始まったばかりなので、高山線を1日に2往復くらいしかしていない時期。だから30分の完成尺予定に対して、撮影日数を40日間計画。1日に4カット撮影できれば御の字という、勿体無いロケでした。

音楽はオリジナル曲を作曲して、東京のスタジオに小さな管弦楽団を呼んで録音するという贅沢さ。ただし、当時私は30分全編にわたって続く重苦しい音楽が耐えられず、1曲だけ別のアーチストの曲(既成曲)に差し替えることを監督に要求して「それではこの作品は、もう俺のじゃない!」と監督が椅子を蹴ったという経緯を懐かしく思い出します。この時の監督は知る人ぞ知る葉方丹氏であります。恐れ多いことをしたものです。


花と列車 沿線の四季

そして第2弾は「花と列車」(リンク先は著作者非公認です)と題してJR東海管内(東海道新幹線、東海道本線、中央西線、高山線、紀勢線)沿線に咲く「花」と列車が絡む風景だけで構成するという作品でした。計画はしたものの、絵になる草花がなかなか見つからず、ロケ計画が遅れ、関連事業本部の担当課長(超エリート)が電話をしてきて「(できると言ったのに)嘘つき!」と言って電話をがちゃんと切られたという事件があり、映像業人生初めての挫折感を味わったことを思い出します。その後なんとかクランクアップして、なかなか風情がある良い作品になりました。

この「花と列車」も作品中の音楽はすべて新規作曲、演奏は特別に編成した名古屋の四人のミュージシャンによる楽器演奏でした。実はこの中で後にジャズシンガーとして有名になるケイコ・リーがピアノを弾いていたことは誰も知らないことでしょう。


さよならキハ80系 特急「南紀」

第3弾が「さよならキハ80 特急南紀」(リンク先は著作者非公認です)。鉄道ビデオ界において不朽?名作として讃えられているみたいで、私自身も好きな作品なのでちょっと嬉しいです。このビデオで多数音楽をお借りしたのが佐藤準さん。中でも冒頭でキハ80が走り始めるシーンで使われている曲が人気があって、みなさんがジーンと来るようです。佐藤準さんのレコード会社がポニー・キャニオンだったご縁で、これもTさんがアレンジしてくれたものでした。


のってみたいなしんかんせん 「のぞみ君」となかまたち

第4弾は「乗ってみたいな新幹線」(リンク先は著作者非公認です)。初めて子供向けの作風で制作しましたので、あまりドラマチックではなく、私自身内容をよく覚えていません。

この頃になると、関連事業本部の中でもセルビデオ事業が投資予算の回収に程遠いことがわかってきて、この作品を最後に大予算での鉄道ビデオ制作は終わりを迎えたのでした。


その後、鉄道セルビデオの世界からは遠ざかりましたが、今でも鉄道が走る映像シーンを見ると、どこかへ行きたくなります。旅情を掻き立てられることもありますが、私の場合、ロケに飛び回っていた若い頃を懐かしむ気持ちが強いようです。ほんとうに中部地方あちこちに思い出があります。JR東海さんありがとうございました。


鉄っちゃんビデオのプロデュースを懐かしむ
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