インタビュー型動画で注意したい人選
企業PR動画において代表者や社員へのインタビューが定番となりつつあります。この手法はインタビューを通じて企業の社風、魅力や熱意を、説得力をもって伝えることを目的としています。しかし、適切に制作されていないインタビュー動画は、期待される効果を発揮できないどころか、逆効果となり、例えば採用動画では優秀な人材の入社を躊躇させてしまう可能性があります。ここでは採用動画の制作を例にインタビューの人選を考えます。
【このページの目次】
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不適切な人選
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不自然な台詞回し
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リアリティの追求が逆効果となる場合
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インタビュー型採用動画の適性
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効果的な採用動画制作に向けて
【役立つヒント集】
1. 不適切な人選
採用動画に登場する人物の選定は極めて重要です。なぜなら、その人物が会社の印象を大きく左右するからです。具体的には以下のような点に注意が必要です
外見の重要性
だらしない髪型や服装は避けるべきです。ただし、ユニークな外見であっても、それが会社の個性や文化に合致し、好ましい印象を与えるのであれば問題ありません。
言葉遣いと話し方
乱暴な言葉遣いや不適切な話し方は、会社全体の印象を損なう可能性があります。丁寧かつ明瞭な話し方を心がけることが重要です。
口下手な人の扱い
必ずしも雄弁である必要はありませんが、自分の思いを適切に伝えられる能力は重要です。口下手な人を起用する場合は、その人の個性や魅力が十分に伝わるよう、インタビューの構成や編集に工夫が必要です。
会社の代表としての適性
登場する社員はたとえ一般社員であっても、その会社を代表する「顔」となることを理解しておく必要があります。企業の価値観やビジョンを体現できる人物を選ぶことが重要です。
人選にあたっては、「この人が我が社を代表する社員として相応しいか」という観点から慎重に検討ししてください。テレビCMの出演者選定と同様、採用動画に登場する人物の選定は十分な注意を払うべきです。
退職時の取り扱い
なお多くの場合で起こる問題は、その方がのちに退職された時の扱いです。労務部門、法務部門の方とよく話し合って人選時に対策しておく必要があります。
2. 不自然な台詞回し
インタビュー型動画の魅力は、その「リアリティ」にあります。しかし、しばしば見られる失敗として、回答者が明らかに台本を読んでいるように見える場合があります。この問題を避けるためには
質問内容の事前共有
インタビューの質問やテーマを事前に共有することは重要ですが、具体的な回答まで準備させるべきではありません。
自然な回答の重要性
回答が簡潔すぎたり、いわゆる「模範解答」のようになりすぎたりすると、視聴者は「言わされているだけ」「本音ではない」と感じてしまいます。
個性の尊重
回答者の個性や言葉遣いを尊重することが重要です。その人らしい言葉遣いや表現こそが、視聴者にリアリティと共感を感じさせます。
適度な事前準備
完全な即興ではなく、ある程度の準備は必要ですが、それが不自然さにつながらないよう注意が必要です。
インタビューでは「それは本音?」と視聴者に疑問を持たれないよう、真摯で誠実な回答が求められます。会社の建前や正論を述べることも重要ですが、それが回答者の個性や実際の思いと乖離していては効果が半減してしまいます。
3. リアリティの追求が逆効果となる場合
すべての会社がリアルな姿を見せることで魅力を伝えられるわけではありません。特に以下のような状況では、リアリティの追求が逆効果となる可能性があります。
社員の士気が低い場合
全体的に社員のモチベーションが低い企業では、そのことが映像を通じて露呈してしまう危険性があります。
単純作業が主な業務の場合
仕事の内容が単調で動きがない場合、たとえ意義深い仕事であっても、ありのままに伝えると魅力的に映らない可能性があります。
職場環境に課題がある場合
職場の雰囲気や環境に問題がある場合、それが映像に反映されてしまう恐れがあります。
このような状況下ではリアリティの追求よりも、理想的なイメージを描くことに重点を置いた映像制作が推奨されます。ただし、それは決して虚偽の情報を提供することではなく、企業の理想や目指すべき姿を描き、それに向かって社員全体が成長していく契機とすることが重要です。「あなたの会社は、良い会社ですか?」という問いに社員の方が胸を張って「はい」と答えられるような企業文化が、採用動画制作の前提として求められます。
4. インタビュー型採用動画の適性
インタビュー型の採用動画は、すべての企業に適しているわけではありません。この手法が効果を発揮するのは、以下のような特徴を持つ企業です。
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社員が自社に誇りを持っている
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明確な企業理念やビジョンがある
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オープンで透明性の高い企業文化がある
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会社が社員の成長や満足度を重視している
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独自の強みや特色がある
これらの要素を持っていることが、インタビュー型採用動画の成功の鍵となります
5. 効果的な採用動画制作に向けて
インタビュー型採用動画は、適切に制作されれば企業の魅力を効果的に伝える強力なツールとなります。しかし、その制作には細心の注意と戦略的なアプローチが必要です。
重要なポイントをまとめると:
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適切な人選:会社の価値観やビジョンを体現できる人物を選ぶ
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自然な回答:台本に頼らず、個性や真摯な思いが伝わるようにする
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企業の現状認識:自社の強みと弱みを正確に把握し、適切な表現方法を選択する
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長期的視点:採用動画は一時的な採用ツールではなく、企業ブランディングの一環として捉える
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継続的な改善:制作した動画の効果を測定し、常に改善を図る
長年の経験から、採用動画の制作は単なるリクルートマーケティング活動ではなく、企業の本質的な価値を問い直す機会でもあると感じます。自社が「良い会社」であることを目指し、日々の企業活動を通じて実現していく。そのプロセスの中で制作される採用動画こそが、真に効果的で魅力的なものになると思います。
企業はこの採用動画制作のプロセスを通じて、自社の強みや課題を再認識し、より良い職場環境や企業文化の構築に向けた取り組みを加速させることができます。そうして作られた採用動画は、単に人材を集めるだけでなく、企業と応募者の間に真の共感を生み出し、長期的に良好な関係を築く基盤となるに違いありません。