私たち動画・映像制作会社に制作を依頼されると、お客様はさまざまな動画・映像制作用語を耳に知ることになります。もちろん私たちはできるだけ専門用語を使わないようコミュニケーションしますが、せっかくですからこの機会にいくつか用語を覚えるのも、今後の映像体験の幅を広げることになり、楽しいかも知れません。
映像・動画制作用語集
1. あおり
カメラを下から上に向けて撮影する手法。被写体を力強く、威圧的に見せたい場合に使用する。建築物や高層ビルの撮影でよく用いられ、被写体に威厳や圧迫感を持たせる効果がある。反対の手法は「俯瞰(ふかん)」と呼ばれる。
2. 板付き
シーンの冒頭から出演者が画面に映っている状態。撮影開始時から演者が所定の位置にいる状態を指す。ドラマやCMなどで、演者の動きを伴わない静的なシーンを撮影する際によく使用される手法。
3. 映材
照明用フィルターやジェル、バッテリー、テープなど、撮影に必要な消耗品の総称。事前に十分な在庫確認と準備が必要で、特に長期ロケーションでは予備を含めた万全の準備が求められる。
4. 絵コンテ
シナリオに従ってカットの内容を作画したもの。各シーンのカメラアングル、構図、演出意図などを視覚的に示し、撮影スタッフ間で共通認識を持つための重要な資料。1ページに通常6~8カットを配置する。
5. オンリー
音声のみを収録する作業。映像を伴わない音声素材の収録で、ナレーションやボイスオーバー、効果音などの録音に使用される。防音設備の整った専用スタジオで行われることが多い。
6. 画角
カメラに映る範囲を角度で表したもの。レンズの焦点距離によって決まり、広角レンズは広い範囲を、望遠レンズは狭い範囲を撮影する。画角の選択は映像の印象を大きく左右する重要な要素。
7. カット
撮影開始からカメラを止めるまでの1つの動画の単位。編集の最小単位となり、複数のカットを組み合わせてシーンや作品が構成される。テイク(同じカットの撮り直し)とは区別される。
8. カメリハ
カメラリハーサルの略。本番撮影前に、カメラの動き、照明、出演者の位置や動きなどを確認するリハーサル。技術スタッフと出演者の連携を確認し、本番での問題を事前に防ぐ目的がある。
9. クロマキー
特定の色(通常は青または緑)を背景にして合成する手法。背景色を別の映像に置き換えることで、スタジオ内で様々な場所での撮影を可能にする。天気予報やバーチャルスタジオでよく使用される。
10. 香盤表
一日の撮影スケジュールと段取りを一覧表にしたもの。出演者の集合時間、メイク開始時間、撮影順序、必要な小道具など、撮影に関する詳細情報が記載される。制作進行管理の要となる資料。
11. 三分割構図・二分割構図
画面を縦横それぞれ3つ(または2つ)に分割し、その交点や線上に被写体を配置する構図法。バランスの取れた安定感のある映像を作るための基本的な撮影技法。
12. シズル
食欲をそそるような映像表現。食品の質感や温度感を強調し、視聴者の感覚に訴えかける撮影・演出手法。スローモーション、マクロレンズ、特殊照明などを駆使して表現する。
13. 実景
出演者がいない風景やロケーション場所の撮影。シーンの前後につなぎとして使用されたり、作品の雰囲気作りに重要な役割を果たす。時間帯や天候を考慮した撮影計画が必要。
14. シナハン
シナリオハンティングの略。ドラマや映画の撮影場所を探す作業。脚本の世界観や要件に合った場所を見つけ出し、撮影の許可交渉なども行う。作品の質を左右する重要な準備作業。
15. ジンバル
カメラの揺れや傾きを自動で補正する電動式の機器。モーターとジャイロセンサーを使用して、滑らかな動きの映像を撮影可能。歩きながらの撮影や追従撮影に重宝される。
16. なめる
カメラとメインの被写体の間に物を配置し、その物にピントを合わせながら被写体に向かってフォーカスを移動させる手法。奥行き感や立体感を強調する効果がある。
17. パイロット版
本格的な制作の前に作られる試作品。企画の実現可能性や視聴者の反応を確認するために制作される。予算や規模は本番より小さいが、重要な要素は含まれる。
18. フレームイン・フレームアウト
被写体が画面に入ってくる(フレームイン)、または出ていく(フレームアウト)演出。意図的な構図やタイミングで行うことで、ドラマチックな効果を生む。
19. 物撮り
商品や小物などを撮影すること。商品の特徴や魅力を最大限に引き出すため、ライティングや構図に特別な配慮が必要。ECサイトやカタログ制作で重要な撮影技術。
20. ホワイトバランス
撮影環境の光源に合わせて、白色を正確に映すようカメラを調整する機能。色温度の異なる様々な光源下でも、自然な色再現を可能にする基本的な設定。
21. 見切れ
本来画面に見えないはずのものが映り込んでしまうこと。マイクや照明機材、スタッフの影などが該当。事前のカメラリハーサルや細かなチェックで防ぐ必要がある。
22. リテイク
撮り直し。技術的な問題や演技の修正が必要な場合に行われる。完成度を高めるために必要だが、時間とコストがかかるため、適切な判断が求められる。
23. ロケハン
ロケーションハンティングの略。撮影場所を下見して決定する作業。交通アクセス、電源確保、音環境、許可申請の必要性なども含めて総合的に判断する。
24. やおや
手前の被写体を低くして、後ろにいくにつれて傾斜をつける構図手法。人物やオブジェクトを階段状に配置することで、奥行きのある立体的な映像を作り出す。
25. フォーカスプル(プルフォーカス)
意図的にピントを外したり合わせたりする技法。被写体の感情の変化や心理状態を表現する際に効果的。特にドラマやミュージックビデオでよく使用される。
26. デプスオブフィールド(被写界深度)
被写体の前後の焦点深度を調整する撮影技法。背景をぼかすことで被写体を際立たせたり、全体にピントを合わせて空間の広がりを表現したりできる。
27. スナップズーム
急激なズームインやズームアウトを行う手法。緊張感や衝撃的な展開を表現する際に使用。アクション映画やドキュメンタリーでよく見られる。
28. ハイアングル
カメラを高い位置から下に向けて撮影する手法。被写体を小さく、か弱く見せる効果がある。俯瞰的な視点を表現する際にも使用される。
29. フォロー撮影
移動する被写体に合わせてカメラも移動しながら撮影する手法。被写体の動きに注目させ、臨場感を高める効果がある。スポーツ中継などでよく使用される。
30. ダッチアングル
カメラを意図的に傾けて撮影する手法。不安定さや緊張感を演出する効果がある。サスペンスやホラー作品でよく使用される。
31. ローアングル
カメラを低い位置から上向きに撮影する手法。「あおり」と同じ意味で使われることも多い。被写体を大きく、力強く、威圧的に見せる効果がある。
1. アスペクト比
画面の縦横の比率を表す数値。16:9(ワイド画面)や4:3(スタンダード)など。動画の用途や視聴デバイスによって適切な比率を選択する。映画館用とスマートフォン用では異なる比率が求められる。
2. エンコード
動画データを圧縮してファイル形式に変換する作業。用途に応じて適切なコーデックやビットレートを選択し、品質と容量のバランスを取る。ストリーミング配信では特に重要。
3. 解像度
映像のきめ細かさを表す数値。縦×横のピクセル数で表現される。4K(3840×2160)やフルHD(1920×1080)などが一般的。高解像度ほど鮮明だが、データ容量も増加する。
4. 拡張子
ファイルの種類を区別するための文字列。.mp4、.mov、.aviなど。動画の用途や再生環境に応じて適切な形式を選択する必要がある。
5. コーデック
動画データを圧縮・変換・復元するプログラム。H.264、H.265、ProResなど様々な規格があり、用途に応じて選択する。圧縮効率と画質のバランスが重要。
6. フレームレート
1秒間に表示する静止画(フレーム)の数。24fps(映画)、30fps(テレビ)、60fps(スポーツ中継)など用途により異なる。高フレームレートほど滑らかな動きを表現できるが、データ容量も増加する。
7. ビットレート
1秒間の動画データ量。高ビットレートほど高品質だが、ファイルサイズも大きくなる。ストリーミング配信では帯域幅を考慮して適切な値を設定する必要がある。
8. マルチデバイス
スマートフォン、タブレット、PCなど、様々な端末で視聴可能な形式で出力すること。各デバイスの画面サイズや再生環境に適した設定が必要。
9. アフレコ
撮影済み映像に合わせて音声を録音する作業。セリフの録り直しやナレーション、吹き替えなどで使用。映像と音声の同期が重要で、専用のスタジオで行われることが多い。
10. SE(Sound Effect)
効果音。足音、ドアの開閉音、環境音など、映像に臨場感を与える音響効果。既存の音源を使用するか、フォーリー(音響効果)として新規に録音する。
11. エフェクト
映像に加える視覚効果。フェード、ディゾルブ、ブラー(ぼかし)など多様な効果があり、場面転換や感情表現を強調するために使用する。
12. カラーグレーディング
映像の色調整作業。露出、コントラスト、彩度などを調整し、作品全体の統一感を出す。作品の雰囲気作りに重要な後処理作業。
13. キーフレーム
動きや効果の開始点と終了点を指定するポイント。アニメーションやエフェクトの変化を制御する際に使用。中間のフレームは自動補間される。
14. サムネイル
動画を代表する静止画像。視聴者の興味を引く重要な要素で、内容を適切に表現する画像を選択する必要がある。
15. シーケンス
編集ソフトで作成する作業単位。複数の映像、音声、エフェクトなどを組み合わせて一つの作品を構成する。
16. ジャンプカット
時間の経過を省略して場面をつなぐ編集技法。同じ被写体の異なるタイミングの映像を直接つなぎ、時間の圧縮や強調効果を生む。
17. タイムライン
映像編集ソフトの作業画面。時間軸に沿って映像や音声を配置し、全体の構成を視覚的に確認・編集できる。
18. テロップ
映像に表示する文字情報。タイトル、説明文、字幕など。フォント、サイズ、色、表示時間などを適切に設定する必要がある。
19. トリミング
映像の不要な部分を切り取る作業。画面の端を切り取ってサイズを調整したり、時間軸上で開始点・終了点を調整したりする。
20. パン
カメラを水平方向に動かす動き。編集時に動きの速度や方向を調整し、より自然な動きに修正することも可能。
21. ピクセル
デジタル画像の最小単位。画素とも呼ばれ、解像度を構成する点の一つ一つを指す。
22. プロジェクト
一つの作品を構成する素材や設定をまとめたもの。素材の管理から最終書き出しまでの作業環境を提供する。
23. BGM(Background Music)
背景音楽。シーンの雰囲気を演出する重要な要素。著作権に注意が必要。
24. レンダリング
編集した映像を最終的な形式に書き出す作業。エフェクトや合成を含む複雑な編集ほど時間がかかる。
25. 露出
映像の明るさ調整。白とび(明るすぎて詳細が失われる)や黒つぶれ(暗すぎて詳細が失われる)を防ぐ。
26. ワイプ
画面の一部に別の映像を表示させる編集方法。ニュース番組での中継映像表示などでよく使用される。
27. 暗転
画面を徐々に暗くしていくエフェクト。シーンの区切りや終わりを表現する際によく使用される。
28. グリッジ
意図的なノイズや歪みを加えるエフェクト。サイバー感や不安定さを演出する際に使用。
29. トランジション
場面転換時の映像効果。ディゾルブ、ワイプ、フェードなど様々な種類がある。
30. 反転
映像を左右や上下に反転させる効果。必要に応じて構図を改善する際に使用。
31. フェードイン・アウト
映像や音声を徐々に表示/消去する効果。シーンの開始や終了時によく使用。
32. マスク
映像の特定部分のみを表示/非表示にする効果。部分的な補正や合成に使用。
33. モーショントラッキング
動く被写体に追従してエフェクトや文字を付加する技術。
34. ノンリニア編集
デジタルデータとして取り込んだ映像を、任意の順序で自由に編集できるシステム。
35. ルミナンスキー
明るさの差を利用して映像を合成する技術。自然な仕上がりが特徴。
1. アルファチャンネル
グラフィックにおける透明度を定義するデータチャンネル。0%(完全透明)から100%(不透明)まで設定可能。ロゴやテロップの合成、特殊効果の作成など、多層的な映像制作に不可欠。
2. ENG(Electronic News Gathering)
電子機器による取材システム。カメラマン、音声担当、記者などで構成される報道取材チーム。機動性が高く、ニュース現場での即時的な撮影に適している。
3. MA(Multi Audio)
映像制作における音声の仕上げ工程。セリフ、効果音、BGMなど複数の音声素材をミキシングし、最終的な音声トラックを作成する。音量バランスや音質調整が重要。
4. 演出
映像作品の表現方法を統括する役割。撮影手法、演技指導、照明、音響など、作品の方向性を決定し、各セクションの調整を行う。作品の質を大きく左右する重要なポジション。
5. オーサリング
DVD/Blu-ray制作の工程。メニュー作成、チャプター設定、各種機能の実装など、ディスク化に必要な作業全般を指す。視聴者の使い勝手を考慮した設計が必要。
6. 完パケ
完全パッケージの略。タイトル、テロップ、音声など全ての要素を含む完成版。放送や配信に使用できる最終形態の映像を指す。
7. 企画構成
作品の基本概念と展開方法を策定する工程。目的、ターゲット、予算、スケジュール、表現方法など、制作の基盤となる要素を検討・決定する。
8. 白素材・白完パケ
テロップやスーパーを付けていない状態の完成映像。国際展開や再編集の可能性がある場合に重要。後から異なる言語のテロップを入れることが可能。
9. スーパー
スーパーインポーズの略。映像に重ねて表示する文字情報。人物名、場所、時間などの補足情報を提供する。見やすさと視認性が重要。
10. スクイーズ
アナモフィック方式で撮影された映像を正しいアスペクト比に引き延ばして再生すること。シネマスコープなどのワイド画面形式で使用される技術。
11. DSLR(Digital Single-Lens Reflex)
デジタル一眼レフカメラ。高画質な映像撮影が可能で、浅い被写界深度による映画的な表現が特徴。低予算の映像制作でよく使用される。
12. ディレクター
作品全体の指揮・統括を行う役割。企画から完成までの工程で、各セクションの調整や進行管理を担当。作品の質とスケジュール管理の両立が求められる。
13. 電子POP
店頭などで使用される小型デジタルサイネージ。商品説明や広告を表示する電子ディスプレイ。従来の紙POPと比べて情報更新が容易。
14. 動線
撮影における出演者の移動経路。カメラワークや照明との関係を考慮して設計される。スムーズな撮影進行のために重要な要素。
15. バミる
撮影現場で位置や立ち位置をテープなどでマーキングすること。出演者の位置、カメラ位置、照明器具の位置などを示すのに使用。
16. フリップ
番組内で使用する解説用のボードやパネル。図表、写真、文字情報などを視覚的に提示するために使用。分かりやすさとデザイン性が重要。
17. プロデュース
作品制作全体を統括する役割。予算管理、スケジュール管理、人員配置など、制作に関わる全ての判断と責任を担う。
18. プロンプター
出演者に向けて原稿を表示する装置。ニュース番組などで使用され、カメラレンズの前に設置された半透明ミラーに文字を映し出す。
19. タイムコード
映像の時間情報を時分秒フレームで表示する数値。編集作業や音声収録での正確な位置指定に使用。複数カメラの同期にも重要。
20. ガベージマット
不要な部分を切り抜くためのマスク。クロマキー合成時の背景除去や、映像の一部を隠すために使用される高度な合成技術。
21. ワークフロー
映像制作の作業工程表。企画から納品までの各工程の担当者、期限、必要機材などを明確化し、効率的な制作を実現する。
22. コンティニュイティ
映像の連続性。シーン間での時間、空間、演技、小物などの整合性を保つこと。視聴者の没入感を維持するために重要。
23. ログ作業
撮影した素材の内容を書き出し、整理する作業。タイムコード、内容、使用可否などを記録。効率的な編集作業のために重要。
24. メタデータ
映像ファイルに付随する情報。撮影日時、カメラ設定、位置情報などが含まれる。素材管理や権利処理に重要。
25. ラッシュ
撮影直後の未編集素材。デイリーとも呼ばれ、その日の撮影内容の確認や選別に使用される。